SFセミナー・本会

※引用部分は、発言を一言一句正確に書き起こした物ではなく、企画中にメモした内容から再構成したものです。細かいニュアンスは異なっていると思います。内容は当方が理解した範囲を記述したものであり、誤解により意味が間違っている可能性があります。悪しからずご了承下さい。
出演者の記述順は、演壇に向かって左手側からです。
また、文中は敬称を略しました。

1.Speculative Japan 始動!


出演:増田まもる、荒巻義男、山野浩一川又千秋巽孝之(司会)

出演者の中で一番若いのが巽孝之という「年寄り企画」。
NW-SFという難解なジャンルがテーマの企画で、正直言ってよく分からなかった。ただ、荒巻義男ら年寄り陣の活発さに感心させられる。
途中、巽孝之が体験したエピソードを紹介したい。

巽:日本SF作家クラブワールドコン対策をしている。ワールド紺では例年NW-SWのパネルをやっているので、今回の日本SF大会でもやったが、これは実は珍しい。大会スタッフ(?)に対し、パネル内容を説明するのだが、荒巻・川又は当然NW-SFに含まれる(?)と説明した所、若手から“NW-SFとは架空戦記のことですか?”と質問された。

2.藤崎慎吾インタビュー


出演:島田喜美子(聞き手)、藤崎慎吾

冒頭より、深海探査船「しんかい6500」に乗って実際に海中1500mまで潜った大変をビデオを交えて紹介。

通常、深海探査船で撮影された映像には音は含まれない。研究上必要ないためだ(深海6500mで使えるマイクは存在しないような気もするし)。音が入っている場合があるが、それは船内の音を拾っており水中の音ではない。一般人としては、深海でどんな音がしているのか興味があった。探査船は海中で静止している際も一部モーターなどが作動しており、その動作音が結構やかましい。機関を極力止めて静かになった状態で、海底火山から吹き上かる熱水の音が録れた。(藤崎)

これは会場で聞かせて貰ったが、ホワイトノイズの背景から、コポコポした音が聞こえた。
なかなか興味深い。

深海探査船に乗り込む要員を深海のパイロットと呼ぶ。世界で40人いる深海パイロットのうち、日本人は20人を占める。この分野の日本の役割は大きい。ただし、欧米では船一隻に対しパイロットが1名・お客さんが2名という構成なのに対し、日本ではパイロット2名・お客さん1名という構成になっているためもあるが。(藤崎)

また、数百人いる宇宙飛行士と比べて少ないと言う話も。

最後の方で、この分野に興味を持った人がもっと参入してくれば、深海探査船が外国の人ばっかり使っているという現状が良くなるかもしれない、といったことを話しておられた。


3.ショートショートの現在


出演:牧眞司(聞き手)、井上雅彦高井信江坂遊眉村卓

国内では一時期ショートショート(SS)が流行ったが、近年はほとんど出版されていない。この企画では、過去のSS出版状況の年譜を作成し、参加者に事前配布した。

ショートショートの現在」を知るためには過去を知らねばならないということで、高井信がこの年譜を紹介する形で企画がスタート。

次に、SSを書くようになったきっかけについての話があった。

SSというのは短編。初めはコント、笑い話と言われていたのが、星さんが出てきて、星さんが書かないものを書いてゆくようになった(眉村)
お隣にお座りになられている眉村先生がですね、深夜番組をやっておられましてですね、私その頃は真面目な優等生だったですね。勉強はようできた!(笑)夜分ラジオを聞いていたら、眉村先生が語り始められまして、訥々と。人生を変えられてしまいました(笑)毎日放送の漫才落語コンクールでそこで公募があって漫才や落語を書いていたのが、高校の時に賞をもらって書き始めたのが始まり。(江坂)
最初に読んだのが『賑やかな未来』。それでSSを知った。その後星新一を読んだらまた面白くて。その後筒井康隆がNULLを発刊。そこへSSを送ると筒井さんが読んでくれる。というので送ったのだが、そこで選者として読んでるのが筒井さんじゃなくて、また眉村さんなんですね(笑)そこで入選させていただいて、いつのまにやら作家になってる(高井)
SSと出会ったよりも、子どものことに少年マガジンで出会ったのが最初。家に昔SFマガジンがあった。普通のではなくて幻想怪奇特集(?)。当時は星新一は読んでなくて、外国の怖い話何かを読んでた。当時病気ばっかりしてて貸本屋で読んでた。16歳のこと大病をしていて、その頃書き出した。ラジオをよく聞いたいたが、夜中にヒッチコック劇場の再放送をやっていて、それの感想を新聞に投稿することを覚えた。採用されるとお金が貰えるのに味を占めて、今まで書いたのを世に出すとお金の形で反応が返ってくるのが面白くて、賞金稼ぎみたいになった。星さんのSSコンテストの受賞の日が大学の卒業の日で、大学を出てこの業界に就職したような気分になった(井上)

次に、聞き手がSSの魅力について聞いた。

星さんに書き続けるよう言われたので守ってる。PCの前に2時間以上いられないので長編は書けない(笑)2時間くらい出かけるのはSSぐらいしかないので……
SSはですね、昔から「小は大を兼ねる」っていう言葉がありますけどね……そんなん無いって!(会場笑)物語って言うのは小さく圧縮すると爆発する力を持つのではないか。(江坂)
読んで面白い、というのがある。高校生のように小説修行をしたことがない人でもアイデアでプロに勝ちうるのがSSの世界。自分のデビュー作を読み返してみるとプロットは無茶苦茶、本当にひどいんだけどアイデアだけはすごかったという思いがあって書き続けることができている。江坂さんじゃないが、僕も永いのは書き続けられなくて、2時間と言うことはないが3時間くらいが限界。短いモノは趣味でもかけるけど長編は仕事でしか書けない。(高井)
SSっていうのは錬金術ではないか。文章だけで万華鏡のようなおもちゃが作れる。一つの本の中に色々なものを詰め込みたい。(井上)

その他、気になった発言色々。

SSは原稿料が安いと言う点について;
イデアを出す苦しみは同じなのに、短いから原稿料が安いのは困る(牧)

眉村:連想ゲームというのがあるが、連想不能ゲームというのをやったらいいのでは。例えば、「魚」という言葉から絶対思いつけないものを思い浮かべる。そういうことはSSを考えつく才能に結びつく。そういう人にSSを書かせたら面白い
江坂:むかし、お笑いタッグマッチっていう番組があって、三題噺がありましたね。眉村先生がおっしゃった。僕ら、それ出来そうですよね!(会場笑)
眉村:三題噺が出来る人はSSも書ける訳ですよね
江坂:SSが私たちが書けると言うことは、落語家にもなれるということですね!(会場笑)
眉村:・・・なっていた方がトクではないかという可能性がある(会場笑)

  • 長編を読んだら、これはSSやんか!と思うことがある(江坂)
  • 発注がなかったので長編のネタをSSにしてしまったことがある(眉村)

その他、営業上の苦しみや、発表媒体、今後の予定などが語られた。

終わってみれば、牧眞司井上雅彦の冷静なコメントに対し、高井信江坂遊眉村卓が柔軟な頭で現況と今後を語る企画となった。特に眉村卓の活発さには唸らされた。