京フェス合宿(思い出の児童SFの部屋編)

 ちょっと遅れて企画部屋に入ると、机の上に昔県立図書館でよく読んだ(そしてSFファンになった)あかね書房とかのSFシリーズ単行本がずらりと並んでいた。配っていたレジュメはこれみたい→(http://nfp.s2.xrea.com/sf.txt)。
 作品のあらすじは思い出せるんだけどタイトルがわかんないという本があったら言ってください、と司会の実駒さんがおっしゃっていたので当初はそういう流れで企画が進行したんですが、そのうち児童向けバージョンが原作からいかに離れているか?という話に。
 机の上に並べられている本を眺めているうちに雰囲気がだんだんと盛り上がってきた。皆さん小さいときに読んでるんだね。
 机に並べられている『超人の島』がラストシーンがよいと話題になる。私は『超人の島』(http://www.fukkan.com/vote.php3?no=10663)は『人間以上』の子供向け番だという大変恥ずかしい勘違いをしていたので黙っていたが、Arteさんによると『オッド・ジョン』が原作なんだけど、“こんな話じゃな〜い!”ということだった。それはそうと『超人の島』のラストシーンは実によいです。
 このあたりで東京創元社の小浜さんが企画部屋にやってきて吼え始めた。この後はほとんど小浜さんの独演会状態に。
 ・『百万年後の世界』は野田宏一郎の初翻訳小説なんだけど、後で本人に聞いたら野田昌弘曰く“俺が傑作に訳し直してやったぞ”
※『百万年後の世界』のあらすじを紹介しておくと;都市がある日突然選考に包まれ、気がつくと砂漠の真ん中になっていた。都市の住人が太陽を見るとすこし赤い。月を観測すると少し大きい。太陽は時がたつにつれて少しずつ赤く大きくなってゆくという。月は少しずつ公転軌道が下がり大きく見えるようになるという。どうやら我々は100万年後の世界にきてしまったらしい・・・・・・。
・野田昌弘は他にも色々原作にない文やエピソードを盛り込みまくりとのこと。
・『ついらくした月』は月が太平洋に落下して太平洋が全く埋まってしまってその上を延々歩いてゆくと言うだけの話。(←私も読んだのを思い出しました。)
・『宇宙パトロール』(?)は延々と宇宙を旅してゆくだけの話と思っていたら、実際には違ったんだけど自分が記憶していた話の方がかっこいい。子供時代に読んだ話はそういうことがよくあって怖い。
・『ちきゅうさいごの日』は、滅亡寸前の地球から脱出するためのロケットを作る話。脱出ロケットを作るために財団がお金を出し大がかりな制作工事が行われるが、ロケットに乗って脱出できるのは抽選で50人だけ。ロケットが完成し、抽選に漏れた人たちや、周辺地域からロケットのことを聞きつけた人たちが暴徒と化してロケットを襲うんだけど、このシーンでは子供向け版と原作とでかなり内容に差があるとのこと。子供向け版では丘を登り押し寄せる暴徒に対して実験用に作ったロケットに点火して丘の上から転がし、群衆を押しつぶすシーンがあるが原作にはないとか。あと、映画版は傑作、と小浜さんが力説するも会場の人は思い出せないみたいだった。(theta:ロケット到着先の新天地がマット画で本編の出来映えと比べて ちょー安っぽいんですよこれが。)あと、地球最後の日には漫画版があるんだけど、先行して翻訳された日本語小説版にない内容が盛り込まれていて、原書を当たったところ、むしろ原書に忠実なストーリー展開となっていて、漫画家がどうやってその内容を知り得たのか出版史の謎らしい。
・『光る雪の恐怖』はとても怖い。雪が光るんですよ! それがどうしたの?と会場から声が挙がるが、光る雪がとても怖いと小浜さんは力説。(theta:なぜかって言うとそれって雪じゃないから。エイリアンだし。むちゃくちゃ怖い話です)
・1960年代に小松さん(=小松左京)が未来論をやり万博(1970)をやり盛り上がりを見せる中で、1970年を境に翻訳が減ってゆくのはなぜか。1970年までは日本はベルヌ条約に未加盟だったため、海外小説はすべて海賊出版だった。著作権無視なので子供向けに改編するのもやり放題。それが70年の条約加盟以降は、権利金が最初に15%必要などお金がかかるようになってしまった。子供向けの改訳も難しい。そのため、新たに子供向けのSFシリーズなどは出せない状態。しかし法律は過去に遡及して適用されたいため、1970年以前に出版されたSFシリーズの再版は可能(著者には1円も入らないけど)。ただ、翻訳エージェンシーと話した感触によると、訳出時に短くするなどの改編は場合によっては可能なことも有るようだ。

 等々。

 そのほか出た話題;
 ・ロシアSFはすごい。何にもない広大な話か何か巨大な物を建設している。
 創造の第一日/ゲオルギー・グレーウィッチ
 竜座の暗国星/ゲオルギー・グレーウィッチ とか傑作。
 (子供版は『宇宙パイロット』)
 ・『狂った世界』ベリャーエフ
 ・『イルカに乗った少年』は講談社青い鳥文庫に収録されている。(ISBN:4061472194)
 ・ 石森正太郎は海外SFをパクりまくり。「リュウの道」など。万博ロシア館のイラスト集をパクりまくっていた。

 感想を言うと、昔を思い出したようで楽しかったです。色々おもしろいことも分かたし。
 タカアキラさん、実駒さん、お疲れ様でした。